- 飯盒炊爨(はんごうすいさん)の場合
もはや飯盒の存在などほとんど忘れ去られ、今やコッフェルにすっかりと取って代わられてしまいましたが、実はコッフェルよりもはるかに飯を炊きやすい優れもの。なにしろ、飯盒と銘打つだけあって、「ご飯を炊きあげるためのもの」なのですから。ただし、その他の調理では構造上やや不便であるため、現在は様々な用途に使えるコッフェルがよく使われているのです。
それでも一応は記します。作り方はきわめてシンプルです。
一般的な飯盒は3合まで炊けるようになっています。飯盒の容器の中には二本、計量のための線があり、これが水を入れる目安になります。下の線は2合、上の線は3合の米を炊くのに必要な水の量です。標高がより高い場合にはこの限りでなく、多少多めに入れます(詳細は後述)。
なお、これは「米を入れた上での水量」です。水のみをこの線まで入れると、大変なことになりますのでご注意ください。
- コッフェルの場合
これにも計量のための線が引いてあるものはありますが、ないものの方が多いようです。コッフェルは総じて水の分量の調整が難しく、飯盒炊爨よりも失敗する確率はかなり高くなります。失敗すれば当然、グチャ飯(米の表面が水分にまみれた失敗作)か芯飯(火が通ってなくて、ごはんの芯が固い失敗作)を食う羽目になります。いくら経験を積もうが、10回やって10回ともうまく炊けるということはほぼありません。それほどコッフェルで米を炊くのは難しいことなのです。平地で炊く分には簡単なのですが・・・(詳細は後述)。
ちなみに飯盒と違い、米を炊くことができる分量を把握しにくいので、うっかり多すぎる量を炊こうとすると沸騰時に水が吹きこぼれてしまうことになります。
水の量は「米と同じくらいの量」です。3合程度炊くのであれば、16cm径のコッフェルの場合は、米を浸した水が手の甲いっぱいに浸かる程度です。
- 炊く
炊き方は簡単に思えて、意外と難しいもので、時間のタイミングを誤ると失敗します。
どちらの場合もまずは強火にかけます。しばらくするとぐつぐつと沸騰してきますが、ここでふたを開けてはいけません。
鍋が完全に沸騰し、横から吹きこぼれてそうなくらいになったら、1分くらいは我慢をし、その後弱火にします。飯盒の場合はそれから弱火にし、蓋に石を乗せます。コッフェルの場合はふたを押さえて、弱火の火にかけたままいずれも10分〜12分くらい、ご飯に空気圧をかけてふっくらさせます。
それがすんだ後、火からはずして汁物など、別の料理に取り掛かります。この間に「蒸らし」が行われ、よりふっくらとしたご飯が炊けるのです。
- 最大注意点
これは自然現象によって生じることです。
ご存知かとは思いますが、標高が高くなるにつれて空気圧が下がるので沸点が100度を下回ります。すなわち、より標高の高いところで飯を炊く場合、標高の低いところで炊くときに比べると米に火が通りにくいということです。
山地でおいしくご飯を炊くために、以下のことをしっかりと行いましょう。
- 沸騰しても、すぐに弱火にはしないこと。標高が高ければ高いほど水を多めに入れ、この沸騰させる時間を長くすると、火が通りやすくなります。これを怠ると、表面はベチャべチャ、中は芯が残るという「飯にあらざる飯」になってしまいます。こうなってしまっては最悪です。仕方がないので無理矢理食べましょう。
- 飯盒をひっくり返した後、またはコッフェルにかける火を弱くした後、途中でうまく炊けたかどうか不安になることはしばしばなので、時には味見をしたくなるものですが、これは少なくとも弱火にしてから10分くらい経ってからにしましょう。あまりに早くふたを開けると空気圧が逃げ、ふっくら感が損なわれてしまいます。表面は炊けていても、中は芯ということになります。
なお、こんなことを書けるのはもちろん、私がかつて「飯にあらざる飯」を炊いたことが何度もあるからです。というか、今でもよく失敗します(笑)。
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