テント設備と設営方法

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冬山においては、丈夫なテントでないと、すぐに風で壊れてしまいます。テントの値段と構造ですが、二人用で¥30000〜。3人用となると¥40000以上にもなります。

冬山では主にドーム型、カマボコ型のテントが使われ、小〜中人数であればほとんどドーム型を使い、キャラバンのような人数であればカマボコ形も時々使われます。

ドーム型は軽く、テントポールに弾力性を持たせているので、柔構造で耐風力もあります。そして、天井が円形になっているので空流がよく、寒いところで火器をつけたときの熱伝導率が高まります。ただし極端な強風下に置かれた場合、弾耐性の限界を超えてポールが折れたり曲がったりすることがあります。台風時には風の当たりにくいところにテントを張るなどの工夫が必要です。

カマボコ型は天井が高く、広いので居住性がよいですが、風に弱いという欠点があり、しっかりと土台を固めておかないと、すぐに飛ばされます。

なお、テントを張るときの基本として、入り口にあたる部分は必ず風下側に向けます。風上側に入り口を向けてしまうと、強い風が吹いたときに入り口から大量の空気がテント内に入り込んで大きな負荷がかかり、テントが吹き飛ばされてしまうからです。これはテントそのものの耐久力という点でも大きな影響を及ぼすので、入り口は必ず風下側に向けましょう。

◎冬用テントの部品一覧
  • 本体
    文字通り、構成の中心となるものです。ここで生活をします。

  • テントポール
    テントの本体を支える骨組みで、2本である場合が多いようです。

  • フライシート
    テントの本体の上に被せて風雪から本体を守るものです。主にポールに引っ掛けるだけのものと、別のポールで骨組みしてペグ(下参照)で固定するものとの2種類があります。

  • 刀ペグ
    テント本体やフライシートについている紐に付けて地面に固定し、風に飛ばされないようにするためのものです。冬山用テントのペグとしては雪面に対して摩擦力のある竹のペグがよく使われます。鉄のペグだと滑ってすぐに抜けてしまうため、竹のペグを勧めます。

  • 紐ペグ
    本体やフライシートに紐がついていない場合はこちらを使います。フライシートはついていないケースが多いし、ついている場合でも紐が短いので、この紐ペグを使い、できるだけ広い面積をカヴァーするようにします。こうすることでテント本体の中がより快適になります。こちらも鉄よりも竹のペグを勧めます。

    なお、翌朝にテントを撤収する際にぺグを抜き取ることになりますが、気温が低い場合、雪の中にペグが固く刺さったままになり、抜くことが困難になります。この場合、スノーエンピでペグの周りの雪ごと掘り出し、掘った後にエンピの裏面で固まった雪を叩き割って、ペグを取り出します。

    雪が固すぎて、エンピの歯が立たない場合は止むを得ませんから、紐を切断します。このために、紐ペグも刀ペグも、予備が必要となります。
◎テントの設営方法
  • 露営地の選択

    1. 雪崩の危険が少しでもあるところは必ず避ける

      雪崩は、極論を言えば斜面と積雪があるところでは発生する危険性がはらんでいると考えてよいでしょう。また、太陽熱で乾燥している雪が大崩壊したり、露営しているパーティが使う発熱器具で起こることさえあります。
      まず、沢の内部や出会い筋は避けましょう。たとえその場所に雪がなかったとしても、谷上部の稜線には大量の雪があり、積雪量も丈夫に行くほど増えます。これらの雪は沢に向かって流れ込むため、雪崩発生時には大変危険になります。

      狭い、もしくは両側が急斜面になっている鞍部(ピークとピークの間のスペース)も避けるべきでしょう。広く、なだらかな場所であれば露営地として最適ですが、左右から雪が崩れる危険が大きくなります。

       
    2. 尾根線上は風が強いため、十分な注意が必要です。

       
    3. 雪庇の上や下は弾みで崩れ、生き埋めになるので避けましょう。

       
    4. 木の枝に雪が多く積もったところは、多少の弾みで大量の雪が落ちてくるので、危険です。

    最良の条件としては、森林帯や岩壁部分を探すことです。雪崩があったところを見抜く条件は、森林帯でも岳樺(ダケカンバ、白樺の一種)がないところ(多少の雪崩では折れないくらいに丈夫だから)、ハイマツ(地面に這って生える松の一種)が流されていないところ(ハイマツは流されやすいので、ハイマツが流されていない部分は過去に雪崩が起きておらず、危険性が低い)などです。

    風については、稜線上は雪崩は少ない(雪が積もりにくいから)代わりに、風が非常に強いので、風下側の斜面に露営するのが普通ですが、雪庇の下となるようであれば、風上にします。

  • 幕営

    テントを張る場所が決まったら、身につけているピッケルやアイゼンをザックに引っ掛けます。この際、サックを開けっ放しにしていると雪が入って濡れるので注意します。

     
    1. 整地

      • テントの床面積の大きさ分だけ足で大まかに踏み固める。

      • スノーエンピで凸凹を直し、高さを均一にする。

      • スキー板を履いて飛び跳ね、きちんと踏み固める。

      • 最後に再びスノーエンピで均す。


       
    2. 設営

      • テントを広げ、ポールを上に広げる。雪面には置かない。ポールの中に入ると、ポール内で雪が凍ってしまうため。ポール袋やフライシートはテントの中へ(飛ばないようにするため)。

      • 基本的に2人が対称位置でペグを差すのが理想だが、一人の場合、片方をピッケルかスキー板で仮止めした後、対称位置でペグを差す。

      • ペグは張り綱に対して直角に差す。手でしっかりと押し込み、上から雪を被せて固める。

      • 紐の長さを調節する。調節する部位(スライダー)は雪面に近づけない。積雪で凍って埋まるため。

      • フライシートを中から取り出し、本体と同様に対称位置で引き合ってペグで固定する。

      • 雪の侵入を減らし、またブーツの着脱を楽にするため、入り口付近の雪面を少し掘り下げる(深さ30〜40cm、幅50cm四方)。

      • テントの入口以外の三方向に、テントと同じ位の長さの溝を掘る。幅は40〜50cm、深さは30〜40cm。こうすることでテントがいくらか雪に埋もれにくくなり、また、保温効果も高まる。その溝の、入り口に近いところにその日の夜とと翌朝に使う以外のすべてを置く

        ※このときに出た雪の塊で水を作る。

      • 風の強いときはこのときに出た雪の塊を風上側から2〜3m離れたところに暴風壁を作る。高さは本体の2分の1から3分の1。さらにもう2〜3m離れたところにもう一つ壁を作ると、効果が倍増する。

        なお、風が非常に強い場合、本体の半分をあらかじめ雪の中に埋めたり、ブロックをテントに密着させて風から逃れる方法もある。風が流れやすいドーム型ではしばしば適用される。

        これらの作業は当然、手袋を一切外さずに行うことが鉄則です。ですから非常に扱いにくい作業になります。

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