素材について
冬山では着用する服の素材の選択がいのちを左右するとまで言えます。最近では次々と新素材が開発されていますが、昔から使われている素材もいまだ高い需要を誇ります。ここでは衣服によく使われる素材を紹介します。
- ウール
天然素材の代表選手で、保温、防寒と言えばウールというほどのものだったが、近年の合成繊維、新素材の進歩により、取って代わられつつある。もちろん、手袋やセーターなどによく使われ、まだまだ需要は大きい。
欠点は、濡れると縮むことである。
縮む理由は、ウールの繊維が、ある一定の列になっているためで、水分を吸うことで縮むのを、別の方向に走っている繊維で押さえ込む、という縮みを防ぐメカニズムが成立しない。
そこで、その欠点を補うために、数年前に「ウォッシャブルウール(洗うことのできるウールという意味)」というウール繊維に別方向に繊維を通し、縮みにくした合成繊維が開発されたが、高価なため、今だウールに取って代わっていない。
- オーロン
羊毛の素材であるアクリルの新素材。表面に無数の突起をつけて表面積を拡大したもの。保温性と速乾性に優れる。
- クロロファイバー
ポリ塩化ビニール系の合成繊維で、非常に薄いにもかかわらず、熱伝導率が極めて低く、吸水率はゼロ。速乾性にも極めて優れている。現在では下着や手袋に使われることが多い。
- シンサレート
薄い割には暖かいというコットンの新素材。ダウン(水鳥の羽)よりもさらにデッドエア(着衣の繊維の隙間にある空気)を多く蓄えられるので、保温力が高い。ただし、非常に乾きにくい(数時間ストーヴの前に置いて、ようやく乾く程度)ので、ゲレンデスキーウェアとして頻繁に使われるものの、山においては衣服よりもむしろシュラフの内側面によく使われる。
- ゴアテックス
濡れず、蒸れずという相反する問題を両方とも解決した最新素材。薄く、非常に小さな穴(半径0.2ミクロン)を無数に設けることで、水蒸気(0.0004ミクロン)を通し、雨(100ミクロン以上)を通さないという原理を成立させた。初期段階では脂に弱く、汚れによった機能低下という問題があったが、第2期以降でこれらも解決した。クリーニングも可能である。
現在でもある欠点は、下がったとはいうものの、まだ高価で(二人用のゴアテックス製テントでも4万円以上する)、縫目からの浸水を防ぐ機能がないことである。縫い目にはポリ系の糊をつけてふさぐことになるが、効果は薄い。
そして最大の欠点は、ウェアやテント内側からの水蒸気透過機能の限界を超えると水蒸気が溜まって、水滴となってしまうことで、これでウェアの保温機能が損なわれる場合がある。また、テントにおいては炊事、睡眠時の呼吸ですら起こることであり、これは今のところ対策なし。
- エントラント
東レで開発された新素材。原理はゴアテックスと一緒で、水蒸気を通し、雨をはじく。
- ダクロン
ポリエステルとコットン(8:2程度)の合成繊維。薄い割に保温力に優れているので、クロロファイバーと同じように下着や手袋によく使われる。これにウールを加えたダクロンQDダイナミックスという素材はさらに保湿性と保温性に優れている。
- コットン
綿のこと。非常に安価でスタンダードな素材で、薄く、濡れやすく、乾きにくい。また、空気の透過率が非常に高いため、冬山では厳禁の素材とされている。すなわち、大半がコットンで作られているTシャツは冬山で着ないということが、最低限の原則となっている。
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