登山ノススメ
初級冬山訓練編

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冬山を制覇するには、ある程度の特殊な技術が必要となります。ここではそれらについて簡単に述べます。

  1. アイピンワーク

    アイゼンとピッケルは冬山において、最低限必要なもので、これらなしの冬山登山は考えられません。これらを使いこなせなければ、直接命の危機にさらされることになります。

    • 平地、登りの歩行のときはがに股に

      理由は明白です。普通に歩くと、アイゼン爪が内側の足に引っかかり、衣服が破れたり、転倒する可能性が大きくなるからです。下りの場合はがに股にならない程度に足の間隔を開いて歩きます。下りでがに股歩きをすると、バランスを崩して滑落しやすいからです。

    • 足を高く上げて歩く

      日常歩く場合、足裏は地面からさほど離して歩いたりはしません。しかしアイゼンは雪面を歩くときに使うものですから、高く上げないと雪面に爪が引っかかり、転倒する可能性が大きくなります。

      平地や登りを歩くときは「がに股にして足を高く上げる」ことです。

    • 山側の足と谷側の足

      斜面をトラバース(横移動)している場合の基本として、山側の足は登っている方向と平行に、谷側の足は斜面と垂直の角度になるようにします。歩くのに支障をきたすほど徹底させる必要はなく、その形に近づける程度でよいでしょう。足の構えは「がに股歩き」ではなく、内股のように見えますが、足を上げるときはがに股で、落とすときは内股という、非常に複雑な歩き方をします。ですから、夏山のようなハイペースで歩くことが非常に困難になります。ゆっくり、確実に歩くことがアイピンワークの基本です。

    • ピッケル

      雪面を歩くときは常に、事故の可能性を頭に入れます。そうでないと、いざ事故発生のときにすぐに体が対応しないからです。その最低限の動作として、ピッケルの先(シュピッツェ)は山側にくるようにし、雪面に垂直になるようにします。

      さほど険しくないルートをたどるときはピッケルを利き腕で持ち、杖のようにしますが、冬山の稜線歩きの場合、雪庇を避けて歩くことが基本なので、斜面の上を歩かず、中腹をトラバースすることがしばしばです。この場合にもし、自分の利き腕の反対側に斜面の山側があるときは、ピッケルを両手で持ち、山側の斜面に垂直になるようにします。逆に利き腕側に斜面の山側があった場合は、通常歩くときと同じようにピッケルを持てばよいでしょう。

      ピッケルの基本は利き腕に関わらず、両手で扱ってでも山側にピッケルをつくことです。

      これらはある程度の訓練によって習慣付けなければいけません。近くの岩登りの訓練場所などで練習をし、さらに冬山に入ったときに、登りに入る前に復習をします。


  2. 滑落停止

    これはルートから滑落したときにブレーキをかけるための技術で、ピッケルの長い刃のほう(ピック)を使います。基本姿勢は、うつ伏せになり、シャフト(ピッケルの柄の部分)を胸元あたりに持ってきて(右利きの場合はピックを右手に、シャフトを左手に持つ)、ピックを雪面に突き刺します。この際、足は必ず上に上げること。雪面にアイゼンが引っかかり、弾き飛ばされないようにするためです。

    足から落ちた場合はこれでいいのですが、頭から落ちた場合はまず基本姿勢に体勢を整えなければなりません。まずピックを頭上の斜面に打ち込み、それを支点にして体勢を反転させます。その後は同様です。
    仰向けで落ちた場合は落ちながら体を反転させ、うつ伏せになります。後の手順は同様です。

    最大の注意点は足を谷側にして、うつ伏せになることと、アイゼンを雪面に触れないようにすることです。

  3. シール歩行

    シールとは、比較的緩やかな登りのときに使う山スキー専用のすべり止めのことです。アイゼンよりも扱いが難しい分、移動力はアイゼンよりもかなり上で、特にピストンで冬山に行く場合などは必要不可欠なものとなります。

    シールはその名の通り、貼り付けるものです。まず先端の金具をスキーの先端に引っ掛け、スキーの後端までしっかりとつけます。

    次に山スキーの踵を外します。踵を外さないと歩けないからです。

    歩き方ですが、基本は「動かすスキーを浮かさないこと」です。スキーを浮かせると、動かしていないほうに全体重がかかり、シールの摩擦力の限界を超えて、普通のスキーと同じように滑り落ちてしまうからです。

    ですから、動かすスキーを滑らせるようにします。慣れるまではかなり苦労しますが、慣れれば移動力が増すので、練習してみましょう。

    次に「片方の足を動かしている間はもう片方の足を動かさないこと」です。これも滑る要因となります。

    片足のスキーを滑らせて前足に体重を思いきりかけると、シールは最大限の摩擦力を発揮して、ぴたりと停止します。この状態を確保して初めて、もう片方の足を動かします。この繰り返しです。

    比較的緩やかな斜面ではこれでよいのですが、少々急な斜面になると摩擦力よりも重力のほうが強くなり、滑落しやすくなります。この場合はスキーアイゼンをビンディングとブーツの間に取り付けると、多少ましになります。なお滑る場合は、直登せずに斜面をジグザグとトラバースしながら登ります。

  4. 輪かん敷歩行

    輪かん敷は、深い新雪を歩くときに、足が雪面に埋もれないようにするために使う装備で、簡単に言えば、忍者が水団の術で使うときのあれです。
    この場合はがに股で歩くことがまず要求されます。かん敷の横幅が広いため、普通に歩くと自分の足に引っかかったり、もう片方のかん敷にぶつけて転倒する可能性が大きいからです。
    足は雪面から抜いた足を外側から内側に回していくような感覚で運びます。踵やつま先からついたりせず、水平に足を置くのが効果的です。

    雪洞については行動編で後述、ザイルワークは初級向きではないので割愛します。

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