- 食料
これが一番かさばります。
食事は基本的には1日2食です。昼に腹いっぱい食べると、その後の行動に大きな支障をきたします。昼食代わりに甘いものやパンといった、消化しやすいものを、行動中や休憩中に食べながらいくとよいでしょう。
- 米
朝は0.6〜0.8合、夜は1.0〜1.4合、自分の食事の量に応じて持っていきましょう。一つ言えるのは、平地よりも腹が減るということです。
- おかず
おかずは基本的にかさばるので、あまり多く持っていくと荷物になるのですが、多少の缶詰、カレーのルーだけの貧乏カレーなどでもいいでしょう。しかしそれではかなり惨めだと思うからは、少し苦労してでもレトルト食品を持っていったほうがよいでしょう。軽くてヴォリュームがあるという点でお勧めなのは「永谷園」のマーボー春雨や釜飯の素各種です。他に食事にスープやふりかけ、漬物などを付けると、よりアクセントがつくと思われます。なお、缶詰は缶切りを使わないものがベストです。買うときに選んで買いましょう。
- 行動食
飴やグミ、ラムネなど、手軽にすぐ食べられるものが最適です。お勧めはチューブミルクです。普段は甘すぎるのですが、山では身体が疲れているのか、非常においしく感じます。
- 飲み物
朝夜はインスタントコーヒーや、紅茶、緑茶のティーバッグで暖かい飲み物を飲みましょう。山で身体を冷やすと、すぐ体調を崩すことにつながります。行動中の飲み物はポカリスウェットやエネルゲンなどのスポーツドリンクの粉を持っていき、それを朝の出発時にポリタンクに入れて溶かしていきましょう。
- 非常装備と予備食
山では天候不順や不慮の事故等により、行動不能になったり、時には引き返なくてはならない場合があります。そんな時にこれを用意しておかないと、行動に支障をきたすだけではなく、時としては死に至る場合さえあります。必ず用意しましょう。
非常食はスニッカーズやビスコ、板チョコレートといった甘いもの、非常装備はロウソク、缶メタノール(燃料の代わり)、薬品やバンドエイドなどの衛生用具を用意します(後述)。
予備食は5日の予定であれば3〜4日分、10日の予定であれば5〜6日分用意します。これは天候不順で進めないときのほか、パーティ行動のときに誰かが怪我で下山せざるを得なくなったときに「エスケープ時食料」用として用意しなくてはならないからです。エスケープルート(行動編で後述)をたどってもは必ずしも1日で下山できるとは限りません。ですから予備食は多めに用意します。
予備食は不慮の事態にならなければ使わないものなので、なるべく軽いものにしましょう。即席ラーメンやジフィーズ(乾燥食品)などが標準です。
- テント
これはきちんとしたものを買わないと、山ではひどい目にあいます。自転車のときのような安物を選ぶことはできません。
特殊な材質を使ったテント(ゴアテックス製など)は確かに、雨風を強力に防ぎますが、それは外側からのものを防ぐのであって、内側からのものを防ぐことはできません。これはほとんどが表がゴアテックスなどの強力な合成繊維、内側がナイロン張りという二重構造になっていて、内側の水分、すなわち調理時に出る水気、呼吸に含まれる水分、そして汗などがテントの内壁にくっつくのです。
これを軽減するには、ベンチレーターという内側から外の空気の取入れを調節するものを有効に使い、必要に応じて空気を中に入れることです。特に、調理時はガスが密閉して一酸化炭素中毒になることさえあるので、ベンチレーターは必ずあけましょう。天候さえ許せば、外で調理するのが最良の策です。
テントの値段と構造ですが、山で中〜長期縦走用となると、二人用で¥30000〜。3人用となると¥40000以上にもなります。
テントには主にウィンパー(ミード、要するに三角屋根の形です)型、ドーム型、カマボコ型の三種類がありますが、山では小人数であればウィンパー型とドーム型の中間の形をしたものがあり、これが最適です。多人数であればどちらでもいいですが、ドーム型のほうがよく使われています。ウィンパー型は耐風力はありますが、その収納人数の割に重いという欠点があり、そのおかげで近年は次第にドーム型にとって変わられるようになりつつあります。ドーム型(¥30000前後〜)は軽く、テントポールに弾力性を持たせているので、柔構造で耐風力もあります。そして、天井が円形になっているので空流がよく、寒いところで火器をつけたときの熱伝導率が高まります。ただし極端な強風下に置かれた場合、弾耐性の限界を超えてポールが折れたり曲がったりすることがあります。台風時には風の当たりにくいところにテントを張るなどの工夫が必要です。
なお、テントを張るときの基本として、入り口にあたる部分は必ず風下側に向けます。風上側に入り口を向けてしまうと、強い風が吹いたときに入り口から大量の空気がテント内に入り込んで大きな負荷がかかり、テントが吹き飛ばされてしまうからです。これはテントそのものの耐久力という点でも大きな影響を及ぼすので、入り口は必ず風下側に向けましょう。
なお、テントは主に以下のような部品から構成されています。
- 本体
文字通り、構成の中心となるものです。ここで生活をします。
- テントポール
テントの本体を支える骨組みで、2本である場合が多いようです。
- フライシート
テントの本体の上に被せて風雨から本体を守るものです。主にポールに引っ掛けるだけのものと、別のポールで骨組みしてペグ(下参照)で固定するものとの2種類があります。
- ペグ
テント本体やフライシートについているヒモに付けて地面に固定し、風に飛ばされないようにするためのものです。主に金属で作られていますが、比較的強度が弱く、強い衝撃を与えるとすぐに曲がってしまうので注意が必要です。なお地面が固く、ペグでテントを固定できない場合は、テント本体やフライシートのヒモについているスライダーというヒモの長さを調整する器具を使い、石などの重いものをそこに通して固定します。
- 銀マット
テントの床に敷くものです。ハイキング用マットでは多少心もとないので、銀マットを敷きます。¥1000前後
- クルクルマット
寝るところの敷き布団の役割をします。これがないと翌朝、かなり腰や背中にきます。¥1500前後。中に空気を注入してよりクッションの役割を果たす優れものもありますが、あまり購入者はいないようです。
- シュラフ
寝袋のことです。夏山でも未明になると必ずといっていいほど気温が一桁まで下がります。安物を買うと泣きを見ますので、これはしっかりとしたものを買うことをお薦めします。
安いものとなるとナイロンオンリーのもので¥3000くらいからありますが、とにかく薄く、夏山ではまったく役に立ちません。そこでせめて表張りナイロン+シンサレート(薄い割に保温力がある合成素材)のシュラフ(¥7000前後)にしましょう。なお、表張りナイロン+羽毛のシュラフ(¥11000前後)があれば言うことなしです。
それでも寒い場合はフリースの毛布(¥4000前後)や、ゴアテックス(蒸れず、濡れずを謳った、最も優秀な合成素材)製のシュラフカバー(シュラフの上にかぶせるカバー。¥16000前後)などがありますが、これは夏ではなく、冬山で役に立つものです。
- ポリタンク
通称ポリタン。ポリ容器のタンクです。小さなものから3リットルのものがありますが、普通は2リットルがよく使われています。一人の場合でも2つ必要だと感じることもあります。調理するためと、行動時の栄養補給水としても水が必要で、便宜上、二つあったほうが便利だからです。この場合は1リットルのポリタンと2リットルのポリタンを買うと、水が無駄にならず、少しでも軽くはなるので、便利です。これは複数パーティの場合でも、一人一つは持っていきましょう。ちなみに水を買うところはリットル単位で売っているので、容量が大きさでわかるポリタンがないと売ってもらえないことさえあります。¥1000ほど。
- ラジオと天気図
NHKラジオ第一放送で朝10時と夕方16時、夜の22時に気象放送をしますが、これの専用の用紙が大きな本屋で販売しています。この放送は各地の気象、風速、風向、高気圧や低気圧の位置、前線の位置などを細かく放送するものです。もし翌日の天気を詳細に知りたい場合、この天気図を書き取るほかに、「観天望気(数時間ごとに風向、風力、雲量、雲行を観察すること)」をし、それらを分析して天気の予測をする「気象解説(行動編で後述)」という技術が必要になってきます。が、大抵の山小屋には翌日の天気などが黒板に書いてあるので、それを見れば問題ありません。しかし、この技術を身につけておくと、長期的な山行においてはいざというときに非常に役立ちます。
- ヘッドライト
これがないと、暗くなった後に何も見えなくなってしまいます。なお、早朝行動の際にもこれがないと前が見えにくいので、必需品です。
- 電池と豆電球の予備
豆電球の予備はヘッドライトに付属されています。電池はヘッドライト電池が4つ一組で5日行動の場合は3セット(12本)ほどの予備が必要です。これはマンガン電池ではなく、必ずアルカリ電池にしましょう。比較的消耗が早いので、この予備は多いに越したことはありません。なお、ラジオの予備電池として持っていくのもよいでしょう。
- ナイフ
これがあると様々に役立ちます。食料を切るにも、パッケージを切るにも、様々な用途に使えて便利です。これはゴム紐か何かをつけて、テント内では携帯しておくとよいでしょう。
- 火器
EPIガスやイワタニ、キャンピングガスなどといった各メイカーが発売しているガス燃料が標準的です。火がつく「ヘッド」部分と、ガスのカートリッジに分かれています。カートリッジはスモールとラージがありますが、5日くらいの中期縦走であれば、カートリッジは予備を含めてラージサイズで2つくらいは必要です。ヘッドは申し訳程度の小さなものから、何もここまでという非常に大きなものまでありますが、大体は「申し訳程度」よりももう1ランク大きなものを買っておけば十分です。¥7000前後。カートリッジのラージサイズは普通用で¥700円ほど。ガスは寒くなると気化しにくくなって、普通用では点きが悪いので、そのために寒冷地用というものがあります。多少割高になりますが、秋山や春山登山でも役立ちます。
なお、他にも石油燃料と、ホワイトガソリン燃料の火器があります。これは「コールマン」という海外のメイカーなどが販売しています。スタンドと本体に分かれているものが標準的で、百回から数百回、ポンピングして燃料の入っている缶に空気を入れ込み、燃料を気化させてから火をつけるので、つけるのに5分ほどかかります。これらはガス燃料のものに比べると多少割高になり、¥10000を超えるものが標準です。
石油燃料は着火点が高いので安全性に優れていて、しかも燃料の重量そのものが軽いという利点があります。ホワイトガソリンは寒い状態においても火力が衰えないという利点がありますが、逆に着火点が低く、取り扱いを誤るとテントごと火だるまになることもあるので、一般向きではありません。
いずれにしてもこれらは山で長期間、多人数で縦走する場合に必要なもので、小人数の中期であればガス燃料のものが最適でしょう。
- ライター
ガスの火器の大半は着火装置がついていますが、比較的やわで、すぐにつかなくなることもあるの、念のためにもっていきます。
- コッフェル
「コッヘル」とも言われますが、正確には「コッフェル」です。要するに小型携帯用の鍋のことです。これも非常に小さなものから大規模なものまでありますが、直径18cmほどの大型鍋と、それより一回り小さな鍋がセットになっているもの(¥7000弱)で十分です。大体は大鍋と小鍋がセットになっており、さらにランクを上げるとやかんもセット(¥9000前後)になっています。複数パーティの場合で1セットのコッフェルを使う場合はやかんが役に立ちますが、1人か2人くらいであれば鍋二つのセットで十分に事足りるでしょう。
- バール
ボウルとも言います。要するに皿のことです。よくあるプラスチックで皿とコップがセットになったもの(¥1500前後)でも問題はありませんが、ステンレスで直接火にかけられるもの(¥3000前後)があります。これはちょっとお茶やコーヒーを飲みたくなったときに非常に役に立ちます。
- ブキ
食器のことです。主にスプーンのことを「ブキ」といいますが、フォークなどの総称にも使われます。スプーンとフォーク、1本ずつあればまず大丈夫です。家から持ってきましょう。
- スポンジ
意外と役に立つ優れものです。
- トイレットペーパー
様々な用途で使われますが、とりわけコッフェルやバール、ブキなどを洗った後、拭くために役立ちます。他にも鼻紙として使えますし、山小屋のトイレにはほとんど紙がないので、その場合にも使えます。また、周辺で用が足せないという切羽詰ったときにも使えます。山の場合はそういう場所が少ないので、意外と重宝します。まぁあまりにそういうことが気になるのであれば、行動前に必ず用を足しておくことです。なお、これは意外と消耗します。普通のダブルのペーパーであれば二つあってもいいくらいです。これはかさばらないように、あらかじめ芯を抜いて持っていきましょう。
- 新聞紙
火器や調理中のコッフェルの下に敷きます。5枚くらいあるとよいでしょう。また、夜などに足元が寒い場合、足に巻きつけると、新聞紙の原材料の特性上(原材料は石油)、かなり暖かくなります。これは隠れた裏技です。なお、小型まな板などがあれば、下に敷く新聞紙の代用にもなります。これは中に小型包丁、缶切り&栓抜きが入っており、非常に役立ちます。¥2000くらいで売っています。
- 軍手
調理中、コッフェルは熱いのでこれをつけます。なお、テント設営のときも、軍手をつけてやったほうがよいでしょう(破損を防ぐため)。
- 布テープ
意外なほど、様々な用途で使えます。多めに巻き取って持っていきましょう。
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